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MY HISTORY                                                2014.1.1

「拓郎くんはやるべきことをやっているじゃないかっ!!」と顔を真っ赤にして訴えてくれた上司!

私の大学卒業後の就職先はIT系企業。大手企業にシステムエンジニアを派遣して、お客様の社内で開発プロジェクトを進めていくビジネススタイルです。

 

私も入社間もなく大手製造メーカーYに配属され、制御系システムの開発に携わることに。

 

最初は全くノウハウがないので勉強の毎日。数ヶ月後には上司の同行という形で初めての出張。何も分からない中、出来ることを必死にやっていたのが懐かしい思い出です。

 

そして、その約10年の間には様々な出来事がありました。

●26歳で背負わされた重すぎる責務

 

プログラマーとして4年ほど経ったころ、大きな転機が訪れました。

 

当時、ある大手自動車関連メーカーとの大きなプロジェクトを取り仕切っていた上長が別件で手が回らなくなり、急遽その代役を任されることになったのです!

 

プロパーもいる中、そして、私より一回り以上年上の方が数多くいる中で若干26歳の私が指名されたこと。

 

これは今思うと大きな意味を感じますが、自分の会社でも入社4年目であり管理者としての経験はゼロ。そんな私が現場で数千万円規模のプロジェクト全体の管理を任されたのですから必死です。

 

その日からの仕事内容は一変しました。

 

社内の各部署や先方との打ち合わせの毎日。

 

自分の事だけではなく、当時関わっていた十数人の開発メンバーの進捗状況や作業スケジュールを把握し、やったことのない仕様検討や他部署関係者との調整作業。

 

今思うと、このタイミング”で管理する側”として年上の方に支持を出す立場になったことは本当にいい経験になったと思っています。

 

残業は毎日深夜まで続き、先方とのやり取りに四苦八苦する毎日。

 

それでも何とかやれていたのは一人の上司の存在でした。

●この人のためなら!強い気持ちが芽生えた瞬間

 

先方の不条理な要求の毎日が続く中、所属部署の監督職も営業もどうすることもできない状況。

 

正直精神的にもキツかった。誰かに頼りたくてもどうにもならない。

 

そんな中、海外に行っていることが多かった上司(以下、Sさん)が帰国し、ある打ち合わせが開かれました。

 

参加したのは、所属部署の副部長、Sさん、若手営業、私の4名。

 

海外に行っており詳細を把握出来ていなかったSさんに事情を説明。

 

すると・・・Sさんが顔を真っ赤にして監督職、営業に向かって、

 

「拓郎くんはやるべきことはやっている!こんな理不尽なことばかり一方的に押し付けられるのでは、これ以上拓郎くんに申し訳なくて仕事をお願いできない!!」

 

と。

 

私は驚きました。と、同時にSさん対する想いは言葉では言い表せないものがありました。

 

なかなかイメージされにくいかもしれませんが、この省略したシチュエーションには“普通ではないこと”がいくつか存在します。

 

1つは、参加している副部長は、Sさんよりもさらに上の存在であるということ。

2つ目、私は契約上は外部の人間であり、見方によっては使い勝手のいい立場であるということ。

(※勘違いのないように補足ですが、配属先の現場では非常によい待遇をしてもらっておりました。)

3つ目、これが一番大きかったのですが、これまでこんなことを言ってくれる人は今まで一人もいなかった、ということ。

 

Sさんが、私にとっての「管理職とは」というイメージを創る過程において多大な影響を与えたことは言うまでもありません。

 

仕事には非常に厳しい人でした。人間なので、たまには勘違いで怒られることや、無茶なことを言われたこともたくさんあります。

 

それでも、人というのは一度「この人の為なら」と思うと、多少のことで気持ちは揺らがないものです。

 

その後、この大きなプロジェクトだけでなく、その他の大きなプロジェクト管理も任されることになりましたが、この経験が後に「管理職」となる自分にとって非常に大きな出来事でした。

「こんなことをやるために入社したのではない!!」とキレた部下が・・・

ここからは、開発の現場ではなく勤めていた会社でのお話です。

 

当時勤めていた会社は約100名近くの従業員がおり、管理職の下にメンバーが配置される小グループ制が採られていました。

 

ある時、一人の管理職が退職することとなり、新たな管理職として私が指名されました。

 

27歳のことです。

 

ここから私の「管理職」としての日々がスタートしたのです。

 

なりたてのころのメンバーは、1つ年上の先輩1名、3つ下の後輩1名、新卒が2名の計4名。

 

このとき既に自分の中には1つの信念がありました。

部下が求めているモノとは!?何年も保存されていた一通のメール・・・

管理職で経験された方は多いのではないでしょうか。

 

それは、“会社としての方針” と “自分の考え” とのギャップ、です。

 

私にもそれを象徴する出来事がありました。

 

ある年、技術的な資格取得を強化するという会社の方針があり、各メンバーにもそれぞれ目標を設定させていました。

 

当時の私は、資格取得はもちろん重要という認識でしたが、それと同時に、本人が自らやる気を出して取り組むことに意義を感じていました。

 

そんな中、メンバーの一人(以下、S)からこんな反応があったのです。

 

「なんでこんなことやらなければいけないのですか?」

「資格取得したら何か変わるんですか?」

「他の社員と比較されるのが納得いきません」

 

と、こんな感じです。実際には、この10倍くらいの言葉が並んでいましたが(笑)

 

それまで直接的に感情を表すことが少なかったので意外な気持ちもありましたが、反面、よっぽど納得いかなかったのだと直感しました。

 

また、第3者から言われた言葉が本人のプライドを傷つけており、退職を促すような発言も受けていたようでした。

 

正直、自分のメンバーに対して勝手をされたことに対する怒りがありましたが、それは置いておいて・・・

 

こういう時にまず考えることは、自分の考えを伝える「手段」と「内容」と「タイミング」です。

 

手段については、基本的には直接話すのが一番ですが、時と場合によってはメールを選択することもありました。

 

正直、メールは危険です。何故なら、温度が伝わりにくく、また、誤解が生じやすいからです。

 

ですので、使い方を間違えると危ないですが、この時は一言一句整理して伝えたかったので、メールという手段を選びました。

 

内容については、本当に試行錯誤しましたね。

 

伝えたいことはたくさんあります。

 

でも、管理職という立場上、自分の言いたいことだけ言うわけにはいかないのです。

 

相当な文字数のメールになってしまいましたが、会社が何を期待しているのか、Sとってなぜ必要なのか、取得して何が変わるのかなどを伝えました。

 

会社の方針としてだけではなく自分の言葉として、です。

 

そして最後に「余計なことを言う人がいたらオレに言ってこい。誰が何と言おうと、Sが辞めればいいなんて絶対思わないから!」と添えました。

●部下は“アナタの言葉”を待っている!

 

管理職にとって会社の立場になり方針を伝えることは重要な役割の一つ。

 

でもここでよくある勘違い。

 

それは、「会社がこういう方針だから」「上からこう言われているから」と伝えれば、それで役目を全うしていると思ってしまうこと。

 

いやいや、違うでしょ。

 

もし、あなたが同じように上司から説明されたら、どうですか?

 

上司は会社の伝書鳩ではないですし、会社もそんなことは望んでいません。

 

部下が待っているのは「上司の言葉」なんです。

 

上司の意思、感情、熱意が混ざり合った、その上司しか発することが出来ない言葉を待っているんです。

 

その言葉のベースに会社の方針や理念がブレることなく存在すればいいんです。

 

もしも、聞いた事をそのまま伝えるだけの存在となっているのであれば管理職は要りません。

 

ここに、チームは管理職次第と言われる所以があります。

 

Sとはその後、何度かこの件について思い出話として語ったことがあるですが、数年経ってもこのメールを保存して残していることを知りました。

 

本気の想いは伝わるということを改め感じましたし、こんなに嬉しいことはないですね。

●管理職としての5年間と「退職者ゼロ」

 

他にも数多くの出来事はありましたが、その後彼らは私の最大の理解者となり、私は誰よりも彼らの理解者となりました。

 

全てを言わなくても伝わる関係。大げさに言えば、1言って10伝わる関係でした。

 

今ではその後輩は立派な管理職になり、退職した私を「そろそろ会いたいです」と飲みに誘ってくれます(笑)

 

そして言ってくれたこの言葉。

 

「”水谷さんだったらどうしているだろう??”と考えることが多いです」

「未だに当時のメンバーには水谷さんの色が残っています」

 

今思えば、昔のメンバーがこのように言ってくれることが何よりもうれしいですし、自分がやってきたことは間違いではなかった、と実感させてくれました。

 

多いときで十数名のメンバーがいましたが、管理職としての5年間で退職者はゼロ

 

今後は、この経験を、同じ立場である若手管理職の方に伝えていくこと、これが私のお役に立てる道であると思っています。

もったいないトラブルを何とかしたい!!社会保険労務士としての原点

全てをお伝えることは出来ませんが、このように管理職としての5年間には様々なことを経験させてもらいました。

 

基本的に、相手によって態度を変えないのタイプなのですが、一回り以上年上の元上司が自分のメンバーになったときには、さすがに「どう接すればいいか」悩みましたね。

 

メンバーへの指導方針で上司との価値観が合わず衝突したことも。

 

「管理」に対する考え方が違っていたのが大きな原因の一つでしたが、メンバーの為に正しいと思ったことであれば妥協はしませんでした。

 

他チームでの退職者の話を聞くたびに歯がゆい気持ちにもなりました。

 

自分が何かできなかっただろうか、と。

 

非常にいい関係でよくお酒も飲みに行っていた2人の上下の信頼関係が、一瞬にして崩壊するところも目の当たりにしてきました。

 

もちろん、これら苦い思い出ばかりだったわけではありません。

 

私が入社したばかりの頃から、思っていたこと口にしても全てを受け入れてくれる素晴らしい環境でした。

 

入社当時の上司を始め、同僚や後輩、そして経営者の方々、会社に関わる全ての人たちで創りあげてきた風土が確かにそこにあったからです。

 

あそこまで言いたいことを言い合える環境は滅多にないと思います。

 

自らが管理職となってからは、メンバーに自分の想いが伝わっている事を実感できたときや、メンバーが自分自身で考えて行動に移していたときなどは、特に嬉しかったですね。

 

振り返ると、5年間で退職者が一人も出なかったのは、日々の何気ないコミュニケーションを大切にし相互理解の関係を創り続けたこと、そして、自分の言葉で語り続けたこと、が重要だったと今では断言できます。

 

そして、管理職として社内のあらゆる立場にある方々と接して感じたこと。それは・・・

 

経営者、管理職、メンバー、それぞれに想いがあるということです。

 

「そりゃ当たり前だ」と思われるかもしれませんよね。

 

ですが、本当に強調したいのはそこではありません。

 

各自のその想いは「普通に話せば分かりあえる範囲であることが多い」ということです。

 

では、なぜトラブルになるケースが多いのでしょう。

 

その要因は様々ですが、

 

・そもそも信頼関係ができていない

・話し合い、説明が不十分

・権利ばかり主張

・不十分な理解・知識による勝手な思い込みや、勘違い

・管理職としての準備が出来ていない

・法律や社内規定の認識、理解不足

 

これらが大多数を占めます。

 

自分自身の周りで実際に起こっていたことであり、“もったいないなぁ”と思うケースも多々ありました。

 

少なくとも、

 

「自分が関わっていたら結果が変わっていたのではないか」

 

「自分だったら辞めさせなかった」

 

と。

 

これが、社会保険労務士としての私の原点です。

 

“もったいないトラブルを何とかしたい”という想い、これだけは変わることがありません。

独立・開業時に作成した小冊子の内容です。

今見直すと拙い文章に恥ずかしさもありますが、原点を忘れないため当時のまま掲載しています。

●管理職に必要な強い信念

 

信念、それは・・・

 

「必要以上に細かいことには口を出さない。大事なコトは本人が自分で考えて動くこと。」

 

これをモットーとして日々試行錯誤している最中、ある最初の事件が・・・

 

それは、現場での業務中、新卒メンバー(以下、Y)の一人が突然私の席まで来て、

 

「僕はこんなことをやるために入社したのではありません!!」

 

と言い出したのです。

 

当時の私の席は、現場の部長などがすぐ近くにいる配置。

 

私はビックリした気持ちを押さえて「チョット向こうへ行こう」と席を離れ二人きりに。

 

この時、自分の立場が不満を「言う側」ではなく「言われる側」になったことを改めて実感しました。

 

でも何故か不思議と、「ここで(初動で)の対処を見誤ってはいけない」という感覚があったのです。

 

初動が肝心。

 

この時は、ひたすらYの気持ちを聴き続けました。

 

よほど溜まっていたのだと思います。でも、このような場合には十分話を聞いてあげることで、話している本人自身が気持ちに整理がついてくるのです。

 

そこから毎日会話を重ね、初めは電車通勤だったYを車で送るなど、まずはお互いを知ることからスタート。

 

このような時、「この人は話を聞いてくれる」と相手に思ってもらうことが出来ると、状況は大きく変わります。

 

聞いたうえで一つ一つ丁寧に語りかければしっかり伝わるんですよね。

 

これを最初から否定の気持ちで入ってしまうと相手は聞く耳もたずになってしまいます。

 

そして忘れは行けないのは、“理解”させるのではなく本人が“納得”すること。

 

単に、理屈を伝えるだけでは長続きしません。

 

何故なら、本人の頭の中で多くの情報が噛み砕れていないから。

 

Yが自ら考え、その結果スッと心に落ちる瞬間に表情も大きく変わります。

 

この時は、1週間後には不満の声はなくなっていました。

 

正確に言うと、不満の気持ちは完全にはなくなった訳ではありませんでしたが、それを無暗に表現しなくなり、まず何かあれば相談に来るようになったのです。

 

前述しましたが、私の信念は本人に考えさせること

 

その為だったら時間がかかることも覚悟の上。そして、それが自分自身の行動がブレないための大きな柱となるのです。

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